2016年3月7日付生協労連書記局発「人手不足対策の補強方針」

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参考資料:生協労連の「人手不足対策の補強方針」の紹介

2016年5月23日付書記局ニュースNo.17の5月16日に行われた16春闘第5回団体交渉記事の中で、生協労連の方針について労働組合が言及するところがあります。

その部分を以下に記載しますのでご参考にしていただけたらと思います。

人手不足対策の補強方針

2016年3月7日

生協労連書記局

生協労連では2014年10月に『パートの人手不足対策~基本時給(採用時給)の大幅引き上げと働きつづけられる職場をめざして~』との政策文書を出しましたが、その後現在に至るまで、抜本的な改善には至っていません。

いまや人手不足はパートに限らず正規採用や委託会社、介護労働者にも及んでいることから、改めてこの問題の根本的に解決するためにはどうしたらよいのか、ということについて、補強方針を作成しました。

ぜひ春闘交渉などで生かしていただければと思います。

1.現在の欠員状況と生協における対策の状況

日本生協連会員支援部が2015年12月に出した「賃金労働条件調査結果の主な特徴と人事労務上の検討課題」では、「人材確保の課題」として、以下のように記されています。

2015年春の新卒採用は588人で毎年増加傾向にある。

新卒採用の内訳は、「四大卒」485人、「短大・高専卒」17人、「高校卒」86人となっている。

2014年度の正規職員の採用・非正規から登用人数は、3,294人(前年+1,850人)と急増した。

内訳は、新卒採用573人(前年+96人)、中途採用1,277人(前年+774人)、登用1,444人(前年+980人)と中途採用と登用が増加した。

正規職員の採用難へ対策では、「合同説明会、訪問活動の強化」「インターシップの導入・強化」「初任給のアップ」「高校卒、専門学校卒、中途採用の強化」などがあげられている。

パート型は店舗・宅配で、約40%の職員が採用1年以内に退職しているが、この数値は昨年から改善されていない。

非正規職員の欠員が大きな問題とる中、採用後の定着から育成が大きな課題とっている。

新人定着のため強化施策では、「採用目的もあるが職員紹介制度の導入」「日々のコミュニケーションを重要視」「新人パート研修での理念教育」など取り組みがある。

本年調査は、初めて具体的な欠員状況の集計したが、パート型職員では欠数が増加している。

前年比較できる16生協の集計では、欠員時間は前年比112%と増加している。

パート型職員の募集方法では、「インターネット・ホームページ」の活用が前年140%超と急増した。

パート型職員の採用難へ対策では、「雇用条件の見直し」「インターネット、ホームページの活用・強化」などがあげられている。

<検討課題として考えられること>

○正規職員採用について

・働く場としての「コープ」ブランド構築の研究・検討

・県外転居(結婚・介護など)に伴う転居先の生協への紹介のしくみ研究

・採用母集団づくりの手法、採用基準と選考方法の検討

・定年延長、再雇用での高年齢者雇用条件拡充と業務の再配置

・多様な人材が活躍できる組織風土としくみの整備(ダイバーシティマネジメント)

○非正規職員確保について

・欠員状況と求人情報、応募受付情報の一元化による効率アップ

・より有効な求人媒体の選定、発注のためデータ管理と活用

・採用から定着・育成までの総合的施策の検討・実施

日本生協連ではこうした状況を踏まえて、パート・アルバイトなど非正規職員の採用一元化とアウトソースを2014年8月からコープみらいで実験的に開始し、その結果を踏まえて昨年11月から京都生協でも開始、この春からはみやぎ生協でもおこなわれる予定になっています。

さらに日本生協連では、「専門職・幹部育成」「女性の活躍」「幅広い人材確保(大学生協との連携など)」「会員生協と日本生協連との人事交流」などを目的として、『人づくり支援センター(仮称)』構想を検討しています。

2.生協職場における実態

生協職場では、代配や本部応援の常態化、サービス労働、過労によるダウン(場合によっては在職死亡)、メンタル不全による長期休職、重大労災、通勤災害などを引き起こしています。

また、正規、非正規とも採用後短期間での退職が多く、生協職場が「長く働きつづけられる職場」でなくなっています。このことは生協労連の推定脱退数はかつて3千人台だったのが、この2年ほどは5~6千人台に増えており、その大半は退職脱退であることからも裏付けられています。

委託労働者、介護労働者も総じて勤続期間が短くなっています。「生協で働くことは好きだが、この賃金では暮らしていけない」と退職する労働者が極めて多くなっています。

また、いま生協職場には雇用区分が多様化(正規、限定、パート、アルバイト、再雇用、委託、嘱託その他)しています。パートも管理職パートと一般パートに区分され、また生協によっては一般パートの中に一時金のある人とない人が混在しているのが現状です。

人手不足から65歳を超えた「再々雇用」の労働者もおり、さらにはそれに加えて派遣会社やシルバー人材センターからの派遣労働者も存在しています。

同じ仕事なのに雇用区分が違うことで、賃金や労働条件に大きな格差が生じることは、ガバナンス崩壊の危険を招きかねません。

既に人手不足による多忙化により、マネジメントが欠如した状態が顕在化しており、根本的な対策が求められている、といえます。

3.流通企業における状況~このままいけば生協に人は来なくなる~

2015年度の最低賃金は、最高の東京で907円、最低の4県では693円で、その差は214円です。

リクルードジョブズの「アルバイト・パート募集時平均時給調査」によると、販売・サービス系のアルバイトの時給は最も低い九州地域(798円)と最も高い首都圏(984円)の間で200円近い差があり、その差は最低賃金の格差とほぼ比例しています。

生協も、こうした地域相場に沿った形で採用時給が設定されています。

しかしこの間、アメリカ発祥の会員制量販「コストコ」が、全国24店舗の採用時給を全国一律1,200円にしています。

時給はポジションによって分かれ、また深夜、祝日勤務になると1,500~1,600円まで跳ね上がります。

コストコではそのようにしている理由を「グローバルスタンダードに基づくもの」であり、「その地域の活性化につながれば」としています(下記記事参照)。

現にコストコが2015年秋に開店した岐阜県羽島市の近隣店舗の時給は、目に見えて上がっているとのことです。

アメリカ発祥の会員制倉庫型量販店「コストコ」が、アルバイト従業員を全国一律時給1200円以上で募集しており、その好待遇が話題を呼んでいる。

近年コストコは地方への出店を進めており、一部地域ではコストコの時給は、地域の最低賃金と500円以上も差がついている。

コストコはなぜ、全国一律で高水準賃金のアルバイト募集を行っているのだろうか。(中略)

1200円という高い時給は、首都圏の相場に合わせた結果だという。

同社は、このような基準を「グローバルスタンダードに基づくもの」と語っており、「コストコが進出している他の国においても同じルールを適用している」という。

同社は、その基準に基づいて「正社員率を50%ととても高く設定しており、高い賃金設定および高い正社員率を設けることによって、その地域の活性化にもつながればと思っております」と回答した。

(『THEPAGE』2016.1.31付)

またスウェーデン発祥の家具小売り世界最大手の「イケア」では、2014年9月の人事制度改革で、約2,400人いるパート労働者をすべて正規化し、給与体系を「同一労働同一賃金」にしました。

イケアのピーター・リストCEOは「働く形態に関係なく、一人ひとりが能力を発揮し、自ら成長するという目標だ。

それに対してイケアは投資を惜しまない。

ビジネスの成長に応じて土地や店舗への投資が必要なように、人への投資が何よりも重要だ。だから今回の制度を設けた」(『東洋経済オンライン』2014.9.4付)と語っています。

また前述のコストコも、正規比率は50%と他の流通業と比較するととても高くなっています。

いずれも外資系ですが、既に日本にもこうした抜本的な改革をおこなう企業ができていることを考えると、小手先の対応では労働者はこうした企業に引き抜かれ、ますます採用困難になり、いずれ労務倒産に至ることは目に見えています。

このままでは、いずれ生協には人が来なくなる可能性があります。

4.人手不足問題の根本的な解決に向けて

日本生協連の「2020年ビジョン」では、組織風土づくりや人材確保の課題が設定されており、また前述の会員支援部「検討課題」でも、「誰でも元気にいきいきと働きつづけられる組織風土づくりの視点」との表現がされています。

問題意識は生協理事会、労働組合とも大きな差はないと考えます。

しかしその問題解決に向けての手立てについては、労使での温度差が顕著にあらわれています。

生協労連では、働くものの立場として、以下の手立てを理事会に求めていくことを提起します

(1)「生協で働くすべての」労働者を大切にする視点での議論を求めよう

生協で働いているのは正規職員だけではありません。

全国の生協は他の卸小売業と比較しても非正規労働者の比率が高く、特に店舗では9割が非正規となっています。

まさに生協事業は非正規が担っていると言っても過言ではありません。

生協理事会は、非正規をコスト削減の視点での議論ではなく、職員区分の区別なく、生協で働くすべての労働者が「いきいきと働きつづけられる」視点での論議をおこなうべきと考えます。

なお、「生協で働くすべての労働者」という点においては、子会社や委託会社の労働者も含んでいます。

これらの労働者がこの課題の議論のなかで置き去りにされてはならないことは言うまでもありません。

前述のように、生協においては様々な施策が検討されています。

この問題の解決に向けては、今働いている人たちの思いや実態をつかむことが大前提です。

議論においては、パート職員を含む職員、労働組合の参加を積極的に推進するよう、求めていきましょう。

(2)原資を増やすことは必須、そのうえで均等待遇、同一価値労働同一賃金の実現の視点をもって抜本的な処遇改善をはかろう

いうまでもなく採用時給の大幅な引き上げが不可欠です。

この間も一時金や退職金原資を時給にまわして、採用時給の引き上げ(=原資を伴わない見せかけの引き上げ)をおこなってきた生協はありますが、均等待遇がはかられず、定着せずに退職していく例が後を絶たず、抜本的な改善にはつながっていないことから、原資を伴わない対策ではまったく意味がないといえます

またなかなか採用できない地域や、近隣の競合店の時給にあわせて部分的に(もしくは採用時給のみ)時給を引き上げるといったこともされていますが、そのことは、すでに長く働いている人たちとの分断を生み、職場の不団結に繋がっています。

この間、正規との格差はさらに広がっており、均等待遇の実現からはほど遠いものとなっています。

均等待遇の実現は、生協事業の発展にとっても不可欠なことであるということに確信をもって、交渉で堂々と要求していくことが大切です。

(3)働かされ方の抜本的な見直しを求めていこう

宅配の現場(委託を含む)では代配が日常茶飯事となり、センター長や副センター長といった管理者までもが配送に行かざるをえない事態となっては、まともなマネジメントは不可能です。

現在好調な宅配事業の業績にも悪影響を与えます。

また生協の職場では依然として数値至上主義と、モノの言えない職場が幅を利かせています。そのことによる弊害が労働者の身体と心をむしばみ、結果として多くの退職者を生む要因となっています。

いまこそ、数値至上主義から脱却し、人を育て、自主性が育つ働き方への転換が求められています。

共済やお誘いなどのノルマの廃止、成果主義賃金制度の廃止・見直し、さらにはハラスメントのない職場、モノの言える職場づくりを問題提起し、そのことへ本格的に着手しましょう。

そのためにも、昨年、生協政策委員会が提起した「生協と生協労働者の未来をつくる2020年への提言」を活用しましょう。

当然のことながら不払い残業の一掃、長時間過密労働の一掃などいわゆるコンプライアンス経営(コンプライアンス経営は労務管理も当然のことながら含む)の徹底が必要です。

営業日、営業時間を見直し、モノの言える職場をめざすための職場のコミュニケーションの推進、ワークライフバランスが可能となる労働環境をめざしましょう。

以上

 

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